私を目の前に
すでに息が乱れて
目が潤んでしまっているお前。


初めて会ったはずなのに
この目を私は知っている。


日常の中で
抑制している姿。


その姿を露にすることが出来る
唯一の空間に
身を投じて


今から始まることへ
鼓動は激しくなり
心身ともにはち切れんばかりになって
早く壊して欲しいと
懇願するその目を。





額を床に擦り付け
挨拶の言葉を口にしてから
流れる数秒の沈黙


勝手に視線を
上げることを許されないまま
僅かに聞こえてくる音と
限られた視界で拾える
ほんの少しの情報で


何をされてしまうのか。


と、考えてもどうしようもないことに
思考を巡らせることしか出来ない。


丸めたその身体が
荒い息に揺れ、小さく震える。


一歩また一歩と
その小さく丸まったものに
歩を進める。


すぐ傍に立ち
しばらくその様を見下ろし
何の前触れもなく腰を下ろす。





背中に重みがかかった瞬間に
拍車を掛けて
荒くなる息。


「何をそんなにはぁはぁしてるの？」


「すみません。興奮してしまって。」


興奮していると
口にしたせいか


びくびくとただ座っているだけの
身体が反応し始める。





「何もされてないのに
　こんなになっちゃうなんて
　おかしいでしょ。」

そう言われてお前は
熱っぽい吐息混じりに


「すみません。すみません。」
と、謝るばかり。


「まったく。
　お前はほんのちょっとの時間も
　じっとしていられないのかしら。」


頭を上げさせ
すっかり蕩け始めてしまっている顔を
平手で打つ。


一瞬表情が歪んだと思えば
打たれるより前よりも
更に蕩けただらしない顔を晒す。


何度ビンタをしても
だらしなく溶けていくばかり。


お前みたいなどうしようもない奴には
仕置きが必要ね。





ちゃんと受け止めきってもらうわよ。







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